ポジティブ物書きの雑記帳

物書き、弥生肇のブログ

寿司喰いたいとか、そういう願望――二次創作の話

 『二次創作』ってご存じですか?
 読んで字のごとく、創作物を二次的に創作すること
 一般的には、既にある創作物の設定やキャラクターを使って、お話やイラストなどを創ることを指しています。
 ある漫画のスピンオフや後日談を考えたり、作中で描かれてないキャラクター同士の恋愛を描いたり、死んだキャラクターが生きてたら……というifの話を考えたり。あるいは複数の作品の世界を繋げてお話にしてしまったり。

 こういう『二次創作』は、元の創作者の許諾の元で行われる、言わば"公式"のものもあれば、許諾を得ずになされる"非公式"のものもあります。
 いわゆる「同人誌」として、商業出版ではない形で刊行される個人の本の二次創作は、ほとんどが非公式のものでしょう。これらは概ね、原作が好きだからこそ本を作っちゃうファン活動なのですが、そこにある著作権その他のいろいろな問題にまつわる議論が存在します。

と言っても、今日の記事は、その辺の難しい話に触れるわけではなく。
私個人の、「二次創作をこんな風に楽しんでますよ~」という話題を少しだけやろうかな、と。
今、二次創作をちょうどやっているので。というか、9/20の艦これオンリーイベント合わせの小説を9/15に書き始めてる体たらくなんですが。
間に合うのか。

さて、二次創作。
ある程度ご存じの方なら、先に述べたように、同人誌を作ってイベント=同人誌即売会に参加して……という楽しみ方を想像する方が多いと思います。
私も、そういう楽しみ方を長らくやってきています。

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※ 2015/6/21の艦これオンリーイベント「砲雷撃戦!よーい!十七戦目」@インテックス大阪での、当方のスペース風景。雪風や吹雪の本の表紙は絵も私が描いてます。合同誌の表紙は、桐沢十三さんにお願いしたりしています。

本を作って、写真のような感じでイベントに参加して、作品を好きな人と本を売り合ったりプレゼントし合ったりしながら交流したりします。
もちろん同人誌即売会では、二次創作だけなく一次創作=オリジナルの創作物も扱われています。(オリジナルだけのイベント、二次だけのイベントなど、イベントによっていろいろです)

私自身の二次創作はと言えば。
同人誌即売会は、高校生のときに長崎県の片田舎で、サムライスピリッツの同人誌片手に参加したのが初めてでした。(おおよその年齢がばれる……)

ただ、自分自身の二次創作について、あるいはそもそも「二次創作ってなんだ」って考えると、もっと遡るし、もっと根源的なところに行き着くんですよね。

たぶん自分二次創作の原点は、幼稚園だかの頃。
アンパンマン」とか、「エルマーとりゅう」とかを読んで幼心ながら感銘を受けて、それを画用紙にクレヨンで描き殴っていたのが原点かな、と。
単に絵を描いていただけ、とも言いますが。
原作ではなかったシーンを妄想して描いてみたり、セリフを書き込んだり。そんなことをしていました。

そして小学校の頃には、ガンダムにどハマり。特にSDガンダム。更に特に、騎士ガンダム
私はノート十冊も二十冊も、自分設定のガンダムの漫画を描いて(絵もストーリーもひどいもんでした)、友達に読んでもらってました。そこそこ好評だったような。

ドラゴンボール」や「ダイの大冒険」の絵も、だいぶ描いてましたね。

そして中学校くらいからはSNKの格闘ゲームに没入し、「サムライスピリッツ」や「KOF(ザ・キング・オブ・ファイターズ)」のイラストを描いたりして……その頃に『同人誌』『二次創作』というものを知り、そっちの世界に足を踏み入れました。

そして一時期は「涼宮ハルヒ」のことだけを考え、今は「艦これ」が日常の一部――

己の黒歴史に触れるのはこれくらいにしておいて。

二次創作のモチベーションは、源泉はなにか。二次創作ってなにか。
少なくとも自分に関して言えば、「好き」「願望」です
その作品が好き、キャラクターやお話が好き。
「これから話はこう展開するに違いない」と予測して、友人と語り合う。
それが更に高じて、「ストーリーがこう展開して欲しい」「このキャラクターにはこうなって欲しい」と言い合い始める。

たぶん、「同人誌」を書いたことがない人でも、なんらかの創作物に触れて、自分で「こうだったらなあ」と妄想したり、一緒に映画を見た友達と「あのキャラクター、これからどうなるのかなあ。絶対xxと結婚するよね」とか会話したりしますよね。
それなんです。
そういうのが、ちょっと熱を持ち過ぎちゃった。ちょっと行き過ぎちゃって、自分で本にしたり、話や漫画や絵を描いてWebにアップしたり。それを見せ合って楽しんで。
それが二次創作のモチベーションだと思うのです。
あのキャラクターが俺の嫁だったら……。この気持ちも延長戦上にあります。あるんです。あるんですってば。

というわけで、私個人は二次創作について、基本的に肯定的です。
ただもちろん、なんでもOKというわけではなく、節度というか、いろいろ守るべき姿勢はあると思います。
原作や著者、作品を好きな人を貶めるような目的で活動するのはどうかと思いますし、権利者の得るべき利益を侵害するような行為はやはりいけないでしょう。

その辺の、ぼんやりした私の考えは、旧ブログで2月に似たようなこと書いたので、それを下記に貼って代わりとします。

もし、頭ごなしに二次創作を否定している人がいたら……ちょっとだけ、違う観点で考えてみてもらえたらな、と思う次第です。

最後に。

冒頭で述べましたが、9/20のオンリーイベント向けに、今艦これの小説を書いてます。雪風足柄がメインのお話「飢えた狼と観艦式」と、雪風と榛名のお話「夏、遅咲きの榛(はしばみ)」の二本です。
間に合うかとっても怪しいんですが、ギリギリまで頑張ります。
ちなみに、印刷所に予約している入稿〆切は9/18の14時。1日半前とかまで印刷所が待ってくれる時代なんですよ。90年代だと考えられない。

さて。
悟空が元気玉を作るために両手を掲げるように、
皆さんから私に「原稿間に合え」エールが押し寄せてくれと祈りながら、
一本目の冒頭だけ、以下にコピペします。

書いてたら寿司が喰いたくなってきた冒頭です。
二次創作は、「寿司喰いたい」とかいう気持ちと同じなんですよ。違うか。


**「飢えた狼と観艦式」冒頭** 

 暮れゆく冬の寒空と、ちらつく雪。 
 人通り少ない灰色の風景の中では、外套を羽織った長身の男が寒そうな猫背で歩いていて、そのすぐ後ろを水兵服の少女がとてとてと追いかけていた。
「さあ、着いたぞ」
 やがて長身の男が、年季の入った建物の前で急に立ち止まり、
「ぷぁっ!?」
 少女が男の背中に顔をぶつけて、鼻をさする。
 男は少女の頭を一瞬くしゃっと撫でてから、賑やかな声と灯りの漏れ出している暖簾をくぐった。少女もすぐに続く。
 二人の視界が突然に、煌々としたものに変わった。 
「中はあったかですね。ところで、しれぇ。ここはいわゆる居酒屋、ですよね?」
「ああ。俺の行きつけ、な」
「これが居酒屋さん……。初めて、来ました」
 少女が目をぱちくりさせながら周囲を見回す。短い茶色の髪が首の動きに合わせて、ふるふると揺れる。
 狭い屋内は、まだ陽の落ちていない時間帯だというのに、赤ら顔の老人やらでガヤガヤとしていた。
 卓上には、徳利とお猪口、魚料理が盛られた小皿やらが並ぶ。
 色とりどりの料理、箸が皿にカツカツ当たる音に食欲をかき立てられたのか、少女のお腹がぐ~と鳴った。
「はうっ……」
 恥ずかしそうに腹部へ手を当ててから、少女が男へと問う。
「えっと、どうして雪風が居酒屋につれてこられてるんですか? 雪風は未成年で……あ、艦娘になったからお酒を飲んでもいいんですね!?」
「うー、違う違う。や、違わなくもないんだが、違う。いいから座れ。あっちに席を取ってあるから」
「は、はいっ」
 店の奥へずかずか進んでいく男を、少女が慌てて追いかけていく。
 他の客と毛色の違うそんな二人を、老人の一人が怪訝そうに見遣った。
「なにもんね、あの二人?」
「なんや、お前知らんとか。あの御方は鎮守府のお偉いさんばい。この店に、よう来らすとよ」
「そうなんや。一緒におった娘っこは水兵みたいな身なりばしとったけど……あ」
「ああ。きっと新聞に載っとった、あればい」
 髪の毛のほとんどない老人が、酒をぐいっと呷ってから、尻に敷いていた新聞を引っ張り出して広げる。
 その紙面に、次のような文字が躍っていた。
 佐世保鎮守府ニテ、新タナル艦娘竣工ス。
 艦名ヲ、陽炎型駆逐艦八番艦『雪風』ト云フ――
 新聞の日付は、一九四〇年一月二〇日。

 魚を捌いている男の姿が見えるカウンター状の席に、長身の男が腰を下ろした。横の椅子に、少女がちょこんと座る。
「この店は、佐世保でも飛びきり旨い魚を出すんだ。腕のいい漁師と組んでやってるんだとさ。だったよな、オヤジ?」
「ええ。今日は冬の寒さでよう身の締まった魚が大漁やったけん、食いたかしこ食ってってください」
「そりゃ楽しみだ。っつーわけで、雪風。今日は好きなもんを好きなだけ頼むといい」
 雪風と呼ばれた少女が、うつむいてもじもじする。
「えーっと……あの、しれぇ。このお店、実はいいお店ですよね? 突然ついてこいって言われたので、その、お給金を置いてきてしまって……」
 瞬き混じりの上目遣いを『しれぇ』と呼ぶ男へ向ける。横目ではちらちらと、生け簀を泳ぐ魚を捉えつつも。
 再び、少女のお腹がぐううと鳴った。
「おいおい、鎮守府司令長官を前になに言ってんだ。だいたい今日は、お前を労おうと思って連れてきたんだよ。……あ、言ってなかったっけか」
「労う? わた……雪風を、ですか?」
 男は、返事の代わりに少女の頭をわしわしと撫でた。
「ああ、そうだよ。艦娘に志願して鎮守府にやってきてから今まで、よく頑張ってたからな。水上試験も全て合格、艤装との相性も上々。まだ頼りないところもあるが、お前はもう正式に〝艦娘〟だ」
「しれぇ……ありがとうございます!」
 雪風は大きな瞳に涙を浮かべ、狭い席で勢いよくお辞儀をして、
「うぐぉっ!?」
 鎮守府司令長官の肩に強烈な頭突きを見舞うのだった。

 それからほどなく。
「しれぇ……お顔が真っ赤です。お酒、がぶがぶ飲み過ぎです」
「いいだろ、居酒屋で酒を飲んでなにが悪い」
「こんなに変な味の物を、どうしてそんなに飲めるんですか? 雪風にはわかりません」
 食事の始まりで司令が雪風に、祝いの盃だと酒を勧めた。雪風は両手でお猪口を持ち、くんくんと香りをかいでから、透明の液体をちゅちゅっと吸った。直後に泣きそうな顔をして、司令が声をあげて笑った。
 雪風はそれ以来、料理をばくばくと食べてばかりである。
 彼女の前にずらりと並んだ料理に横から箸を伸ばしつつ、司令が言い聞かせるような口調で語る。
「せっかく艦娘になって、飲酒も認められる身になったんだ。少しずつでいいから楽しめるようになっておけよ。そのうち役に立つこともあんだ。……っても、どこかの狼やその姉妹みたいに、飲兵衛になっちまっても困るけどよ」
「もぐもぐ……どこかの狼さん、ですか?」
 雪風が、食べ物を口に詰め込んだ小動物のように頬を膨らました状態で、首を傾げる。
 そんな彼女の後頭部を見下ろす位置から、突然に声が降ってきた。
「狼って、もしかして私のことかしらぁ? お二人さん、お楽しみじゃない」
 強さのある、女性の声。
 雪風が慌てて口の中の物を飲み込んでから振り返ると、緩くウェーブのかかった黒髪の女性が腰に手を当て、不敵な笑みを浮かべていた。
 司令が、やれやれという顔をする。
「おお、噂をすれば……ってやつか。足柄、今日も一人か?」
「失礼ですね、提督。今日『は』一人、ですよ」
 足柄と呼ばれた女性の笑みが少し引きつった。
「……?」
 二人の会話の意味がわからず、雪風がきょとんとする。
「ここ、いいですか?」
 足柄は尋ねながら、承諾の返事も聞かず雪風の横に着席した。酒が入って緩慢になった司令が、遅れて「おう」と答える。
「えっと……足柄さん、ですか? もしかして」
「そうよ。私は重巡洋艦艦娘。英国に行ったり中国に行ったりと、大忙しで日本にあんまりいないんだけどね」
「ふわあ、大先輩なんですね! えっと、私、駆逐艦雪風です!」
「なるほど、よろしくね! ……あー、よかった。提督が欲求不満とストレスで、いたいけな子を連れ回し始めたかと思っちゃいました」
「……冗談だよな?」
「ご想像にお任せします♪」

**めっちゃ途中まで******

以降、頑張ります…。
9/20は、東京ビッグサイトのイベント「砲雷撃戦!よーい!第十八戦目 x 軍令部酒保合同演習3」でスペースNo. E-052におります。

 

※ 2015年8月刊行の合同誌
「私の艦これ―夏、それぞれの鎮守府―」

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